「第一条 この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを目的とする。」
行書法の冒頭には、資格の目的が規定されており、行書資格の範囲としては、
①行政に関する手続の円滑な実施に寄与する
②国民の利便に資する
③①と②の範囲において権利利益の実現に資する
堅苦しい表現で一般には少々わかりにくいのだけど、
①は許認可申請等行政庁に対する提出する書類作成提出等手続きのお手伝い
②日常のみなさまの不便を解消
③①と②を通じて法律で認められた国民の権利を擁護する
行書資格の具体的な業務範囲は、第3条に規定されており、
①官公署に提出する書類の作成代理相談
②権利義務に関する書類の作成代理相談
③事実証明に関する書類の作成代理相談
この3つの範囲となっておりますが、事実上、役所に提出する書類、その他法律文書作成が規定されております。
但し、
「行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。」
「他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。」
と規定されているところから、行書法が一般法であることが明記されております。
従来、弁護士法はこの一般規定たる一文が不存在であったので、一般法に対しては対抗力があったものと解せられますね、つまり、他の法律に規定されていても、弁護士法所定を理由として弁護士法違反を名目に業務独占を主張することができた。
だから、行書法のような一般法は特別法たる弁護士法に対抗できなかったのですね、非弁行為等として業務が制限されるのはそのような理由だと考えられます。
しかし、前回にも述べたように、弁護士法は改正され、現状一般法化しちゃったのですね、だから弁護士法72条をもって他の法律に定められた範囲を弁護士の独占であると主張することができなくなった。
よく引き合いに出される弁護士法72条ですが・・
「第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」
行書法との絡みで問題にされがちな「その他の法律事務 」の範囲の扱いですが、少なくとも、行書法の官公署に提出する書類、権利義務に関する書類、事実証明に関する書類に関しては競合することになりますね、この解釈が問題になる。
弁護士会は従前より、事件性不要説を主張しておりますが、これは弁護士法所定の「その他の法律事務 」とは、法律事務全域であり制限はない、という主張なんです・・
しかし、これは判例で否定され、事実上、事件性必要説が支持されておりますね、だから、解釈上弁護士会の主張する事件性不要説は理由がないことになる。
事件性とは紛争性を意味するから、行書法の業務範囲は紛争性のない法律事務、というのが一般的な解釈なのだ、と私は思いますがね・・
それでは、紛争性の範囲なんだが、すべての紛争が排除されるのか、ということなんですけど、実は弁護士法が一般法になった影響でその他の法律が特別法になってしまい、従前の解釈が通用しなくなった、ということなんです。
「民事訴訟法第54条
- 法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ訴訟代理人となることができない。ただし、簡易裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を訴訟代理人とすることができる。
- 前項の許可は、いつでも取り消すことができる。」
簡裁事件は140万円以下の軽微な事件の範囲となるのですが、軽微な事件の取扱いは弁護士でない者が取扱いができるのですね、その規定が民訴法54条なんです・・
つまり、民訴法54条は弁護士法72条の特別規定となるから、弁護士の独占業務である紛争事件であっても簡裁の扱う軽微な事件はその例外という扱いになる。
だから、行書資格者が140万円以下の紛争事件を取り扱いをしたところで、弁護士法は適用されないことになる。
権利義務の書類作成代理相談業務を独占する行書資格者が紛争事件に関与できないと解釈されるのは、弁護士法72条が適用されるから、ということに過ぎないから、140万円以下の軽微な事件を扱う簡裁代理の範囲は民訴法54条の示す裁判所法33条の範囲において、特に規制を受けないことになる。
但し、簡裁代理は許可を要する規定になってるので、行書資格者が140万円以下の紛争事件に関して解決の依頼を受けて委任契約を結んだとしても、簡裁代理許可申請が通らなければ業務ができないことになる。
だから、行書資格者の業務となるためには、簡裁代理許可申請を免責される法律の規定が必要になりますね、つまり、行書法改正です。
現況、簡裁代理権は司法書士は認定取得を前提に付与されておりますが、同様に行書法においても法改正しさえすれば、訴額140万円以下の代理権は自由に設定して、行書資格者の通常業務にすることができる、と私は解釈しておりますがね・・
結論としては、行政書士は業務として、訴額140万円以下の簡裁代理をすることができる。但し、簡裁代理は行書法において規定することで簡裁代理許可申請を免責が可能であるので、通常業務とするためには行書法改正が必要になる、まあ、私の解釈はそういうことです。