飯塚幸三の主張は荒唐無稽とは言えない。

「池袋暴走事故 飯塚被告「踏み間違えた記憶は全くございません」無罪主張 検察は禁錮7年求刑」

上級国民こと前高級官僚だった飯塚被告が運転するプリウスが暴走し、路上を歩行していた親子連れをはねて死亡させた事件なんですが・・

飯塚被告が上級国民だったとかそういう話は別にして、何らかの原因でこのような事故になり、結果、飯塚被告の運転する車にはねられた被害者らは死亡した・・ということで、飯塚被告は罪を問われているのですね。

私としては、一番気になるのは、飯塚被告が一貫して、アクセルを踏んだのではなくブレーキを踏んだのに車が減速するどころか加速して止まらなくなったのが原因と、主張していることですね・・

飯塚被告は90才の高齢者で、通常では運転を控える年齢であるから、現況頭も体も相当耄碌して、ブレーキを踏んだつもりでいても実はアクセルを踏んでたのではないのか、と一般的な印象としては感じるのではないだろうか。

実は私も、飯塚被告の主張を聞いた最初の印象は同様のもので、爺さんも相当耄碌してアクセルもブレーキもわからなくなってるんだろう、特に、運転中パニックに陥って、そもそも事故発生当時の詳細な記憶もないんだろう、と推測しましたね・・いや、むしろ、その推測とはほぼ確信的な感覚でしたよ・・だから、飯塚被告の主張は罪を逃れるための屁理屈であって、一般社会の印象がそうであるように、私自身も飯塚被告に悪印象を持たざるをえなかったですね・・何で素直に被害者に謝罪できないのだ、と。被害者側がいうように、あまりに主張が荒唐無稽なのではないのか・・

しかし、よくよく考えると・・本当にそうなのか・・と・・

私も日頃車を利用して移動しているから、運転手の立場に立って客観的に考えてみると、飯塚被告の主張は、さほど荒唐無稽なものではなく、理由があるのではないのか・・と思うんですよ。

というのは、私も飯塚被告の運転したのと同様のプリウスを所有しているのですが、プリウスという車の構造はハイブリッドシステムで作動しており、昔乗っていたアナログ方式のトヨタ車とは違い、すべて電子制御で車の動きが支配されている。例えば、ブレーキやアクセルもペダルを踏んだ圧力がそのままブレーキパッドやエンジンに直接作動するというよりも、いったん電子信号に変換して間接的に作動している構造になっているのだ。

昨今の自動運転システムというのも、インターネットで外部の指令系統から車を制御しようというものだから、むしろ、運転者の運転技術やスキルをコンピューターが代わって制御し、インターネットを連動させて外部からの何らかの入力を連動させるというものだろう。そうすると、昨今の車の事故は必ずしも運転者の過失100%とは認定できない。

つまり、飯塚被告の主張は決して荒唐無稽ではない、ということになる。

ごく最近のことなんだが、実は私はトヨタ車を運転していて飯塚被告と同じような体験をすることになったのですよ・・本当に驚くべきことがありました・・

私の日頃運転するのは、プリウス以外の別のトヨタ車でハイブリッドではないガソリン車なんですが、これも同様に電子制御化され車の動きはコンピューターで制御されている構造になっている。

この車が最近になってエンジンルームがガラガラと騒音がするのでディーラーで見てもらったところ、エンジンに付加されている発電機に不具合があるとかで、早速新品に交換することになりました。

新品交換後、騒音は一切止んで通常の状態に戻ったのだけど、数日前に急にエアコンが効かなくなり、バッテリーの点滅信号があったから、ディーラーに電話したら休みだった・・もしかしてバッテリーの電圧が低下しているのかもしれないのでディーラーの休日明けにチェックしてもらうかな、っと思いながら、運転をしていたら、走行中今度は急にハンドルが効かなくなった・・

ハンドルが急に重くなり、曲がりにくい状態になったため、車を減速して左の道に入り路肩付近に停止したら、警告灯が一切点滅、車をそれ以上移動することができなくなった。そして、路上で立ち往生することになった。

そのままでは危険なので、早速任意に契約する保険会社を通じてレッカーなどの手配など救援を要請することにした。レッカーが来るまで約1時間程度炎天下に晒され路上で立ち往生することに・・

車の動作が停止するのは、大方バッテリーの出力不足が原因で、私も従前の経験からもそうなのか、とも思ったが、どうもそうではない。そもそも、エンジンの作動中は発電しているはずだから、エンジン作動中に電源が落ちることは考え難いからだ。すると、原因として考えられるのは発電機の故障なのか・・

車に搭載される発電機はダイナモの働きをするものだが、一般にオルタネーターと称される部品だ。昨今の車はすべて電子制御なので、電気の供給が止まれば即停止となり、人力で回復、制御不能になってしまう。しかし、そのオルタネーターは数カ月前にディーラーで新品に交換したはず。

事故当日は、ディーラーが休みだったのでレッカー会社で当日の預かったもらい翌日ディーラーに運搬してもらった。その後、やはりオルタネーターが不良であったことが発覚した・・

オルタネーターはエンジンの出力を利用して発電し、すべての電子制御を賄っているところ、これが不作動となればたちまち車はすべての動力を失い停止する。

これがよりによって私の運転する車で起こってしまったのだ。

幸い一般国道で低速走行中だったので大した事故にはつながらなかったが、一歩間違えば大惨事だった。大方事故というものはそういうものだろう。本人の意志とは別のところで突如起こってしまうのだ。

今回の事故で恐ろしいのは、走行中の車の電源が落ちてハンドル操作ができなくなってしまったことだ。私は長らく数十年間毎日にように運転するから100万キロは運転しているだろう・・しかし、このような怖い体験は初めてだった。

先の飯塚幸三氏の話に戻るが、プリウスを運転して突如運転者の意志以外の何かに支配され事故につながっても何ら不思議ではない、と私は思う。

裁判所はこの事件を判断する場合、車の構造や命令系統を詳細に調査した上で慎重に判断すべきだと思う。単に、飯塚被告の操作ミスともいえないかもしれないからだ。この事件を被害者側に立った感情論だけで判断することは危険だと私は思う。