当事務所は業務のほとんどが建設業許可などの許認可が主体で、その他補助金などの代理申請、相続などの民亊法務業務を依頼に応じて行っております。
その中で、債権回収業務を相談されることがあります。例えば、商品を売った相手方に請求書を送ったが、期日通りに支払いがなかった場合などです。
依頼を受けた当方としては、何回も督促しても反応がない場合を前提として、依頼人を代理して督促状を作成して、代理して書面を送達します。それでも反応がない場合、内容証明を相手方に送達します。
当職名で内容証明を送達した場合、相手方は何らかの反応をします。その後としては、粘り強く相手方と交渉していただく、ということです。
訴訟に持ち込むのもそれなりに効果があります。「それなり」というのも、訴訟により解決できる場合に関しても限りがあるからです。
訴訟の価額が少額である場合、簡易裁判所にて支払督促や少額訴訟の制度を利用する方法もありますが、基本は本人自身が手続きをします。弁護士などに依頼する方法もありますが、簡易裁判所の140万円以下の訴訟では、採算が合わないので、ほとんどの弁護士は委任に応じてくれないだろうと思われます。
行政書士業務の範囲においては、訴訟業務は職能にないので代理して受任はできませんが、弁護士などに訴訟の相談するにしても、どのようにアプローチするべきかは相談させていただきます。というのも、債権回収業務は訴訟にすれば必ず効果が期待できるというものではないからです。
まず、弁護士に相談すれば、相談料として60分1万1000円は請求されるでしょう。実際に訴訟業務を委任するということになれば、手付金30万円は請求される。加えて、債務名義を取得できた場合として経済的利益に対する成功報酬を請求されます。金額にもよりますが、20%くらいは請求されるでしょう。訴訟価額が100万円だったとして、この時点で、依頼者の弁護士に対する債務は、相談料1万1000円+手付金30万円+成功報酬22万円=53万1000円となります。
ここで問題は、債務名義取得に伴う経済的利益という概念ですね・・債務名義とは裁判所による支払い命令の範囲の金銭債権のことで、要するに、裁判所が債権者である依頼者の債権の範囲を公的に認めたということ。しかし、この時点では債権は回収できていないんですね・・つまり、債権者に一銭も手元に残らない。
つまり、従前の内容証明で督促した金額を裁判所のお墨付きを得るために弁護士に依頼すると53万1000円もかかってしまうのです。これで相手方が支払いをしなければ、債権部分の元金部分の100万円+費用の53万1000円=153万1000円が不良資産となってしまう。
次に、債権者としては支払いをしない債務者に対して強制執行をすることになります。しかし、問題は強制執行をする場合、債務者の財産を見つけなければならない。一番見つけやすく確実なのは不動産でしょう。仮に不動産を確認したとしても抵当権が設定されている可能性が高く、競売に付したところで手元にどれだけ回収できるかわからない。加えて、不動産を差し押さえて競売に付す場合、少なくとも30万円以上の供託が必要になります。この30万円はまず戻ってきません。裁判所は不動産の評価をするのに不動産鑑定士を使うので鑑定費用に消えてしまうのです。これらの作業を弁護士に委任したとして少なくとも着手金+成功報酬で53万1000円は請求されるでしょう。
つまり、費用で53万1000円*2=106万2000円>100万円のとなり、元金で費用が賄えないのです。
わかりますか、債権回収の現実が・・弁護士に債権回収を依頼する時点で負けを意味しているんですよ。
債権回収で一番安上がりなのは行政書士に依頼して内容証明を送りつけることまでにして、相手方と交渉して回収するのは一番合理的な方法なんですよ。