裁判をしなくても強制執行は可能です。

当事務所は債権回収業務もやっているんです。債権回収は紛争が前提になるから弁護士の仕事だとかいう弁護士もいるようですが、拡大解釈だと思いますね。債権は契約が成立すると生じる権利だから、契約の不履行が生じると債務不履行となって、債権者は損害が生じれば債務者に対して元金とその他損害金を請求することができます。

債権は、そのほとんどが金銭債権だから、民法第419条所定のとおり、金銭債権の特則に従って、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定め、債権者は損害の証明をすることを要せず、債務者は不可抗力をもって抗弁することができません。

つまり、契約が成立して債務不履行が生じたことを証明できれば、他に特約がなくても、法定利率に従って損害賠償を請求することができるのですね。そこに何ら紛争の余地はないのです。

一方、不法行為に基づく損害賠償はどうなのか。不法行為が前提の損害賠償請求であっても、双方がその損害範囲に付き事前に合意すれば、その後何ら紛争は存在しません。しかし、その不法行為自体に争いがある場合は、弁護士の出番になりますね。その双方の紛争の原因に違法性があるのか否かが争いになっている場合、どちらかが裁判所に訴状を提出して、裁判所に判断してもらって債務名義を取得すべきだからです。その原告又は被告の代理人となってくれるのが弁護士だから、この場合に行政書士の出番はありません。

行政書士の業務範囲としては、①契約書の作成②契約違反があった場合の損害賠償の範囲を確定して、債務者に対して請求書、督促状等を代理請求すること③内容証明郵便作成を作成して債務者に送付して代理請求すること。ここまでが業務範囲になります。

行政書士が代理請求して債務者に督促状や内容証明を送付すると、反応がありますね。その次の訴訟行為を予見するのか、大体の場合、支払ってくる場合が多いですね。

双方が紛争状態であっても、双方が任意に和解して示談書を作成したり、できれば公証役場で公正証書を事前に作成しておくと、裁判所で訴状を提出して訴訟しなくても、公正証書自体が債務名義の役割を果たして、強制執行が可能になります。

それを考えると、事前に契約書等取引に纏わる準備を十分にしていれば、訴訟に至らなくとも、強制執行までが可能となり、債権回収ができますね。いわば、行政書士がいれば弁護士いらずだというわけです。